実は、AIを使いこなす人って、慣れたエンジニアではなく、経営者でもなく、経理マンでもない、普通のおじさんではなかろうか。
最近、ふと思う。
とある非営利活動法人にNotionを導入して3年。
利用者の傾向が徐々に解明しつつある。
その中で、一段と活発に活用しだすカテゴリーの人について、語ろう。
もし、組織の中で発言権を持ちたいと思う人に、どうすれば可能か、ひとつのヒントになればうれしい。
人からの指示を受けて自分がAIになった気分
その団体は、4月から事業が始まる。
初っ端から、新規会員勧誘のイベントが行われた。
取り仕切る人、補佐する人(次回のイベントでリーダーとなる人)、バックアップする人(私)。
この3人体制で、進めることに。具体的に業務分担は下記のとおり。
- リーダー→イベント準備と実施の進行、人員配置、アフターフォロー
- 補佐する人→主にリーダーの仕事をダブルで行う。
- バックアップ→広告出稿、SNSでの告知、申し込みフォーム作成、イベント時の写真撮影から参加者へのフィードバック、傷害保険手続き、経理手続き……。
この周辺作業をすべて、私が請け負ったのだが、実は、私も若い頃同じようなイベント開催の仕事をしたことがあるので、ほぼ指示がなくても何をすればいいのか、業務を把握していた。
とはいえ、準備に係る作業のタイミングは、現地組の足並みをそろえなければならない。私とて、本業も抱えている。ついついリマインドをすっぽかすことも。
しかし、このリーダー。実にしっかりしている。
グループLINEに、私あてのメンションが届く。
「鈴木さん、◯日に参加者に下記の文面でメールをお願いします」
打ちづらいLINEに、メール文を打ち込み、私はただ、コピー&ペーストするだけで完了できるよう、配慮のある圧がかけられるのです。
まるで、私にコマンドを打つような……。
これだけではない。
本番当日に向けて、私の自宅にはプリンターがないことも把握しているので、別の人に、領収書の準備を依頼する内容が、またまたグループLINEに飛ぶ。
保険手続きについては、保険代理店とのやりとりも続いているので、代理店から
「鈴木さん……、参加者名簿が……」とメールが飛ぶ。
各所から、私への指示が、まるでAIに指示するがごとくクリアでわかりやすいことから、どんどん私は、自分が「AI鈴木」になっていく感触を得てきたのだ。
とうとう、私は、
「自分はAIじゃないんだけど」と愚痴りたくなる瞬間も出てきた。
でも、ふと思ったのである。
「もしかしたら、リーダーは、もう私じゃなく、AIに仕事をさせたら完璧なのでは?」
そう気づいた私は、以降、その人の行動パターンを観察してみたのである。
高度成長経済を支えたモーレツ管理職スペックとは
その方の年齢は、私より10年上だ。
高度成長期に、新入社員として鍛えられ、バブル期に現役としてモーレツに働いた人だ。
- タイミングよい指示出し
- リマインドをまめにする
- すぐに行動に移せるよう、言語化した伝達
- その後の結果に対して、きちんとフィードバック
(〇〇がよかった、次は△△して)
つまり、すでに頭の中で仕組み化ができており、LINEに投下されたものをつなげていけば、失敗しないしくみが出来上がっていたのだ。
このタイムラインを見て、どっかで見たような既視感が拭えず、考え込んだ。
これは、Notion AIのチャットウィジェットじゃないか!
まさに、Notion AIエージェントを組み上げるときの思考そのものだったのだ。
AIに仕事を任せるときに必要なものは、ただ、命令文を並べることではない。
- 何を渡せば動けるのか
- どこまでを任せられるのか
- どんな順番なら迷わないのか
- 終わったあとに何を確認するのか
こうしたことを、相手が人であろうとAIであろうと、整理して伝えられるかどうかが、肝なんだと気付かされたのである。
つまり、このリーダー的視点こそが、AIに振り回されないヒントが隠されているわけだ。
これらを私なりに言葉にすると、次の3つにまとまる。
- 人より少し高い位置から全体を見ること→ 目の前の作業だけでなく、流れ全体を俯瞰する視点
- 自分の仕事のどこから先を任せるかを明確にすること→ 何を自分で持ち、何を相手に渡すかの線引き
- 仕事を言語化して、他人でもすぐ動ける形にすること→ 「わかる」ではなく「できる」まで落とし込むこと
この平成ハイスペック管理職だったその人に、もしAIを自在に利用できる環境においたらどうなるか。
もう、ゴリゴリのエージェントを作る未来がクリアに見える。
たまたま、その人がもつガジェットがクラシカルで、ITは苦手だと人に任せてきたサラリーマン管理職だったため、AIを利用しないだけの話。
条件がそろえば、その人はいとも簡単に、会社を興せるのではないかと、背筋が凍る。
実際に、そのハイスペック元管理職に聴いてみた
では、本人はどう思っているのだろう。
素朴な疑問から、本人に話を聴いてみた。仮に名前をAさんとする。
私:「Aさん、ITが苦手と謙遜されていますが、実はAIを上手く使いこなせると思いますよ」
A:「そんな。苦手なことはすべて、鈴木さんに振っているから、できることに集中しやすいんだよ」
私:「他の方への指示も、ものすごくわかりやすく言語化されています」
A:「いや、たいしたことなくて……」
以下、彼との会話の内容を、ギュッとまとめてみる。
- 自分の持っている情報をできるだけ共有する
- 自分ができないことを、誰に頼むか決めている
- 常に組織全体がうまく回ることを考えている
たったこれだけだそうな。
あとは、いかに私が一生懸命やっているか。君の姿勢があってこちらは動けるんだと、賛辞をいただいた。恐縮の限りである。
このような話を聞いて、私はますます確信した。
AIを使うのに必要なのは、最新技術への強さだけではない。
むしろ、現場で人を動かしてきた経験、仕事を回してきた実感、段取りを組んできた知恵。そういう積み重ねのほうが、ずっと大きな力になるのではないか。
だからこそ私は、昭和・平成の現役時代を駆け抜けてきた人たちの中に、AI活用の大きな可能性があると断言する。
実務で培ったナレッジを持ち、相手に伝える力があり、組織を動かす感覚を知っている。そういう人たちがAIを味方につけたとき、できることは一気に広がるはずだ。
今、AIを使い倒している人は、まだ限られている。
でも本当は、その素地を持っている人はたくさんいるのかもしれない。
私は、そうした人たちが「自分はITに弱いから」と引いてしまうのではなく、自分がこれまで積み上げてきた仕事の力こそがAI活用の土台なのだと気づけるような環境を、これからもっと広めたいと思った。
AIは、特別な人だけのものではない。
人に仕事を任せる力。
全体を見て流れをつくる力。
そして、相手が動けるように言葉にする力。
その力を持っている人は、きっともう、AIを使いこなす入口に立っているのだ。
=編集後記=
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