デジタル化・DX化を推進する私ですが、アナログの道具は無くせない派です。
そんな道具を取っ払って、すべてデジタル化できるとは、全く考えていないのです。
物議を醸し出したiPad Proの新CM
2024年5月、Appleが新しいiPad Proを発表しました。
そのときに流されていたイメージ動画が、少し物議をかましたのです。
“あらゆるの音楽で使われる楽器やツール、レトロ感のあるガジェットたちが、圧縮機で潰されて、生まれたのが超薄型の新しいiPad Pro”
この、物を壊す演出に、様々な意見が出ているのですが、私はちょっと違った視点で分析をしています。
このCMを作るにあたり、おそらくAIを利用していたのかもしれません。
今では、なにか新しいものを作り出すときは、必ずAIに壁打ちをしてもらうのが当たり前になってきています。
そのとき、AIに投げかけたWordが、
「薄い」「いろんな楽器や道具」「圧縮されて」という言葉が使われたのかもしれません。
そして、AIが出した答えが、あの映像だったのです。
でも、なぜその映像に、嫌悪感を抱く人が多かったのでしょうか。
これには、この「道具」に対してのある回答を、AIが引き出せなかったのです。
そして、それに気がつかなかった作り手たちだった、それだけなのかもしれません。
ルーティンで蓄積した技能は、道具がトリガーになっている
なぜ、人は道具を愛するのでしょうか。
それも、特に、スポーツ選手や芸術家にとって、道具は感情を持っているかのように、扱います。
なぜ、道具が大切なのでしょうか。
私は、音楽を嗜んできた経験から、道具にはただのガジェットじゃない、身体の一部のように捉えています。
できないからできる、そして表現するに寄り添う楽器
私にピアノを買ってくれた両親に、今でも感謝しています。
幼少期に、ご近所のピアノが大好きで、よく弾かせてもらいに遊びに行っていました。
そのとき、ご近所の方が、母に「この子にピアノを習わせてあげて」と助言して頂いたのがきっかけで、高校生までピアノを練習していました。
結婚のときに、一旦ピアノを手放したのですが、それから程なく、自分で中古のアップライトピアノを購入し、今に至ります。
毎日、ピアノに向かい合って、指が上手く運べず、楽器に当たり散らしたこともありました。
でも、必ず乗り越えることができるし、ぎごちない指運びが滑らかになり、次第に音に色が付けられるようになる過程を体験すると、ピアノを辞めたいという思いは消えていったものです。
電子ピアノではなく、アップライトピアノからくる音波が、身体全体を包み込みます。
そのときの化学反応で、単なる音が音色となって、音楽になる瞬間がくるのです。
そのとき、演奏者はトランス状態になり、演奏の間、音楽を追求する旅に出るのです。
楽器とは、ただ音がなるガジェットじゃないのです。
音を出すために、自分の身体を動かし続け、楽器とともに見つけた最適解を軸に、自分の音作りのフェーズに上がっていくのです。
楽器がそばに居続けてくれたから、音楽を作れるようになるのです。
この感覚は、バイオリニストなら、なおさら強くなります。
まさに、体の一部になる楽器です。楽器が共鳴すると、自分の身体の細胞が動き出して、音楽を作り出してきます。
このループが出来上がるために、毎日繰り返してきた楽器を奏でるルーティンを繰り返してきているのです。
まして、バイオリンは、ものによっては数億になる資産価値があったりします。
バイオリンだけではなく、楽器というものは、演奏者にとって、生涯払いきれない資産価値がついているのです。
正直、そのような楽器を平気でプレス機にかけるなんて……。
信じらんない!!が正直な気持ちです。
アナログな道具から受け取れるメッセージ
デジタルな機器は、アウトプットしたあとの加工が、何よりも得意とします。
しかし、楽器を始めとしたアナログガジェットは、人の身体との対話の中から、深いところから掘り起こしてくれるのが得意です。
Notionのようなデジタルも、脳内にあるものを可視化するのが得意と言われています。
しかし、アナログガジェットは、肉体からでる声を拾うようにアウトプットするため、ほぼ出力ツールとしては時間をかけて熟成されたツールに仕上がっているのです。
声楽家にとっては、自分の肉体自体が楽器です。もう、生きたガジェットです。
このように、生き物のような存在として、ガジェットとして成立させているアナログな道具は、発信者の心を映し出すツールでもあるのです。
アナログな道具は、使えば使うほど味が出るといわれ、リペアもできて、生涯使って育てるように使います。
そんなアナログな道具からは、なんの声も悲鳴もでない、単なるモノとして扱えないのです。
アナログなガジェットから発するメッセージを、どれだけの人が受け取っているのか。
もう、これは、使い倒してきたプロ(スポーツ選手、音楽家、文筆家など)でしか、知らないのかもしれません。
そういえば、かつてメジャーリーグで活躍したイチロー選手もとある記事で、言った言葉に、
「僕は、小学5年生までは毎年ボロボロになるレベルのグラブでした。それでは道具に対する愛着は生まれない。小学6年生の時に僕は軟式でしたが、硬式の一番良いグラブを買ってもらったんです。感動しちゃって、その時のグラブの香りとか忘れないし、ずっと使いました。枕元に置いて、それからですね、僕が道具を大事にする気持ちが強く芽生えたのは」
がありました。
きっと、このあたりの感性は、デジタルでは捉えきれないのかもしれません。
だから、おそらくAIは、プロモーションで、楽器やアナログガジェットをプレス機で潰し切るという発想がでてきたのを、その体験を持たないスタッフが採用したのかもしれない……。
そんな妄想で、私は、なんとか動揺する気持ちを落ち着かせようとしているのかもしれません。
最初にアップしている、バレエダンサーのバレエシューズ。
実は、バレリーナのポワント(トウシューズ)は、もっと凄い摩耗状態で、展示されていました。
道具に命を預けていることがよくわかります。
華麗な世界観を作り出す芸術に、これだけ身体と心と命を預けているわけです。
やっぱり、この感性をデジタルで融合できる世界があれば、私は本望であります。
=編集後記=
【昨日のできごと】
地元の沼周辺の清掃ボランティアへ。
外来植物の駆除です。
かずこのお気に入り
日常の中で見つけたお気に入りを、NotionページにUPしています。
今、 町中華のかた焼きそばにハマっています。
50代からのひとり仕事を楽しむ
ひとり仕事の格言、ブログ・You Tube更新を配信。
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