税理士試験を目指していた頃、講師の先生にこう言われました。
「条文ひとつひとつ丸覚えするのではなく、税法全体を捉えるようにしなさい。葉だけ拾うのではなく、枝や幹を見なさい。」
細かい言葉一つ一つを、揚げ足を取るように覚えるのではなく、全体で意図していることを見定めるのは、税法だけに限ったことではありません。
巷にはたくさんの育児の格言があふれています。
「子どもに無条件の愛を」「子どもを見守るように」などなど
この言葉一つ一つは、意味があって言われていますが、元にある幹の部分を知らずに、言葉だけ知ろうとすると、育児の方向性を見誤るリスクがあります。
「子育てにおけるやらないことリスト」→リンク先
ここでは、自分の苦手なことは、育児でもやらないことをまとめているのですが、ただやらないだけでは育児放棄に繋がりかねません。
エビデンスに基づいて、育児でのやらないことリストう組み立てるには、最低限押さえておくとよい基本的データが必要です。最低限押さえておいたほうがいい3つのデータを紹介します。
この3つだけ抑えておけば、だいたいの育児は乗り越えられると思ってよいでしょう。
身体の発達(スキャモンの発育曲線)
20歳になったときを、100%として、それまでの内臓の発達スピードをまとめたものです。
内蔵を4つに分類してしています。
「リンパ型」免疫力を向上させる扁桃、リンパ節等
「神経系型」リズム感や体を動かす(バランス感覚や音感など)の器用さ
「一般型」身長、体重などの筋肉や骨格、肝臓、腎臓等の胸腹部臓器の発育
「生殖器系型」第二次成長期に発達する、男性らしさ女性らしさ
これらが、どの年代に発達しているのか、グラフにしたものです。
例えば、小学生の子どもに筋力トレーニングをしてはいけない、というのはこの「一般型」の発育が中学生以降に高まるので、それ以前のトレーニングは、体を壊すリスクが増大していることがわかります。
また、小学生になったら熱を出しにくくなるのも、その時期から免疫系の「リンパ型」が急激に発育しているためであることもわかります。
音楽などの早期教育を始める時期も、「神経系型」が爆発的に発達する時期(3歳ごろ)に合わせる意味も理解することもできます。巷では、早期教育は意味がないと言われているケースもありますが、冷静にみると、一概にやってはいけないと言い切るのは間違いでもあることがわかります。
子どもの発達スピードも、子どもによって早い遅いがあります。自分の子どもに対して「早くしなさい」が、まだ体を成長しきっていない子どもにとって、負荷が想像以上にあることも想像することもできます。
心の発達(エリクソンの発達心理学)
今度は、心の発達について押さえておくとよいです。
子どもにかける言葉が、果たして年齢にあっているのか、よく知っておく必要があります。
3歳の子どもに、「お片付けをきちんとしなさい、大人に言われなくても自分でやりなさい」が適切かどうか、みてみます。
3歳から5歳までの発達段階をみると、積極的に動くことや、道具を使って絵を描いたりすることがわかります。しかし、きちんと後片付けをするというのは、5歳以降の学童期に発達するもので、3歳児に言っても効果がないことがわかります。
また、13歳以降の俗に言う思春期になると、自分の自我が確立する時期になります。しかし、周囲の大人が5歳児以降からの関わり方で接すると、子どもはとても嫌がります。
そして、思春期になると、親より社会での関わりを重視していきます。親が子どもに伝えたいことは、思春期になる前に言う必要があることも、この表から想像することもできます。
育児手法(モンテッソリー教育)
モンテッソリー教育とは、たくさんある幼児教育の手法のうちのひとつです。
日本は、学校教育が指導要領によって定められているため、就学前の幼稚園等で導入されていますが、海外では大学までカリキュラムが組まれているところもあるそうです。
簡単に言い換えると、子どもを一人の人間として考えて行動できることを信じるのが、この「モンテッソリー教育」の真髄ではないかと思います。
先程の体の発育と、心の発達、そして子どもの個性に合わせた環境を整え続けるのが、大人の役割なのです。
先の育児の格言のような「無条件に愛する」や「子どもの自主性を尊重する」といった言葉は、子どもを一人の人間として見守るこの「モンテッソリー教育」的なアプローチを行えば、自然とできるのです。
幼児教育専門家が小出しに言う言葉に振り回されず、
自分自身の苦手+科学的エビデンス+目の前の子どもの個性
を軸に、日々の奮闘の支えになってくれたら、嬉しい限りです。