AIで音楽を生成するものがあります。
楽典や楽器奏法の知識がなくても、打ち込みの知識がなくても、簡単にできます。
そんなAI時代での、音楽との付き合い方を考えてみました。

共鳴と摩擦音で音を重ねる楽器。パイプオルガン。
ものの数秒で出来上がる音楽と動画
もう、AIがここまで来ると、音楽を作るという概念がぶち壊されたと思う。
これは、CanvaにあるAIアプリだけで作った動画です。
音楽は、Canvaにある音楽生成AI(AI Music)を使いました。
使い方は簡単。適当な動画テンプレートを貼り付け、曲調をタグから選択し、ポチッと生成ボタンを押せばできあがりです。
私が高校生のとき、同級生で音楽の作曲をしていた人がいましたが、彼を見ていると、アルバイトとはいえ、それなりの専門知識と技能がなければ、人が聞ける曲なんてつくれるもんじゃありません。
ほんの十数秒のテレビ番組のコーナー冒頭に流す、ジングルを作っていましたが、誰もが簡単にできるものではありません。
でも、今、AIにかかれば、専門知識や楽器演奏技能がなくても、なんとなく違和感のないものがオリジナルとして使えるのです。
ポチっとクリックして、パっとできあがり。
こんな未来がくるとは思えず、なんだか肩透かしな気持ちになったりします。
細胞が震えないと心に響かない
読者のみなさんは、歌を歌うとき、涙が出た経験はありますか。
私はあります。
音は、とても不思議です。
外に出す音と、内に響かせる音の二種類があるのです。
今でも覚えています。
私が3歳のときだったかと思います。
夜、ひとりで寝室の布団に寝かされていたとき、寂しくて歌を歌っていたら、鼻の奥がズーンと響き、涙腺を刺激して涙が出てきたのです。
暗い部屋に一人で寝かされていたため、寂しさもあったかもしれません。
でも、歌を歌っていたら、鼻腔を始め、顔面から頭蓋骨の骨が、声の音波に影響され、ビリビリと鳴ったことで、心が壮大な気持ちになっていったのです。
この体験は、今でも忘れられません。
そして、5歳からピアノを習い始めたのですが、アップライトピアノを買ってもらい、打鍵していると、体中に音を浴びる感覚を味わいます。
私の娘は、バイオリンを習っていました。ガンガンに響いている饗体を肩と顎で抱え、両手でそれを撫でているような奏法で演奏する姿は、まるで音を愛でているように見えます。
本人にしたら、爆音を身体で受け止めているとか。
実は、音楽とは、この響きを身体で受け止めることで、なにやらスイッチが入って別モードな感情が湧いてくるのではないか。
そう思えてなりません。
実は、生の楽器や声だけではありません。
スピーカーやアンプから響く音も、同じです。
音を出すためにあれこれ操作した結果、重低音やビートの音波を全身に浴びて演奏できるのも、同じように心が動きます。
ライブ会場に行けば、オーディエンスの声援も含め、大きな音の波に包まれて感動すらします。
音楽とは、この音の波に心身ともに預けて癒やしを施してもらうものなのではないでしょうか。
そこには、人が作った音があります。作った人のもがきも含まれて、聞き手が全身で受け止めているのです。
そういう意味で、クリックひとつで作った音楽は、物足りなさを感じてしまいます。
AIが奪う人間らしさを保つためにすること
おそらく、時間はかかりますが、このAIによる飛び越えた短絡さは、段々と人に馴染んでくるでしょう。
すでに、オンラインでの会話も当たり前になってきている今です。思ったより早く、響きのない世界が広がっていくのは目に見えています。
宮沢賢治のセロ弾きのゴーシュというお話に、こんなシーンがありました。
「母ねずみが、病気になった子ねずみを、ゴーシュが弾くセロの中に入れて欲しいと懇願します。
子ねずみをセロの中に入れて、しばらく練習。すると母ねずみが、もう十分です。ありがとうございました、と、子ねずみを引き取ります。
なんと、子ねずみの病気が治り、元気になっていました。
ゴーゴーとなるセロの音波を浴びて、調子を整えたのです」
オーケストラの楽団の中では、一番下手なゴーシュのセロ。そのため必死に練習し、セロを響かせていたら、いろんな動物が集まって、各々セロの響きを身体で受けて、癒やしていく話です。
音楽って、まさにこれじゃないでしょうか。
AIの時代では、そこそこの曲はだれもができます。
ただ、音の組み合わせをつくるだけではなく、音楽として音を響かせる体験をセットにすることで、世の中にAIによる音楽で埋もれることなく、人間による音楽としてコントロールできるのではないでしょうか。
音楽には、人の業が乗っています。そこで、初めて、演奏者と聴く人に感情を動かせるのです。
AI時代での音楽を嗜む方法。
それは、自分の細胞を震わせる仕掛けを忘れないことです。
自分が心地よいと思える波動を見つけて、ときどき音の波に身を委ねてみてはいかがでしょう。
=編集後記=
【昨日のできごと】
1日、オフ。新しい仕事場のリフォーム案や、溜まったタスクを消化。
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