※硬いものさしは、物の大きさを測る信頼できるツールです。
「経理をやっていると、頭が固くなるのではないか。」
よくそんな目で見られます。
経理をやってきた人間として、頭の固い融通の効かない仕事と思われるのが、少し残念です。
経理は、視野を広くできる、クリエイティブな仕事です。
しかし、油断すると、決められたルーティンを、ただ回していく手作業のようになってしまいます。
そうならないために、どうすればいいのでしょうか。
経理はものさしであれ
ピアノの練習を例にすると、少し腑に落ちるかもしれません。
人前で弾くピアニストでも、毎日「ハノン」で指慣らしします。
これは、私が幼少の頃使っていたピアノ教本です。久々に右手のリハビリのために、引っ張り出してきました。動きにくい指には、とても痺れる練習です。
ここに書かれているように、10本の指が、均等に音を鳴らせるまで、ひたすら弾きます。
経理の仕事のひとつ、「決められたルーティンをしっかりする」に、とても似ているのではないでしょうか。
経理が硬いイメージがもたれる理由は、内部統制の役割を担っているからでしょうか。
ルールから逸脱した取引は、絶対にあってはなりません。
経理というものさしにより、異常値を発見することもあります。
この硬いものさしの役割を担っているからこそ、事業は安心して進められるわけです。
経理は柔軟であれ
しかし、ピアノの世界でも、均等に力を出せばいいわけではありません。
音楽には、「曲想」が必要で、揺るがない技術と、感性を表現できるようにならないと、感動が生まれてきません。そのためには、手首を柔らかくすることが必須なのです。
力を出す、力を抜く塩梅がわかれば、上達は格段に早くなります。
そうこうトレーニングを続けて、やっと、曲の練習に入ります。
今、右手のリハビリで易しめの曲を練習しています。
揺るがない技術を得て、そこに「曲想」を乗せることで、音楽は、やっと感動する芸術になるのです。
今の私には、右手が広がらないので、均一に音を出すことさえままならないのですが、それでも曲を弾くことで、音の鳴るそのさきをイメージすることができて、地道なピアノ教本に取り組むモチベーションを、なんとか保っています。
この、「曲想」を乗せるのも、ピアニストにとって、1つの作業です。
経理も、まったく同じだと思います。
俗に言う「対応力」なのでしょう。決められたルーティンの中で、頭を柔らかくして、視野を広げることが必要です。
昔から続くルーティンの弊害で、逆効果になってしまうからです。
「ちっ、めんどくさいな。」「やりずらいな。」
こんな声が社長や現場から出るようになったら、これは一度ルーティンの見直しをするタイミングです。
ここは、柔軟に経理を取り巻く環境を見直すことにいたしましょう。
しかし、力を抜けきった対応力は、不正の始まりでもあります。
現場からの不協和音が、一概に経理が悪いとは限りません。
そこを見抜く目を、日々のルーティンを回しながら養って行くことがとても大切です。
そして、この、剛と柔のバランスを保つことが、経理の役割なのです。
経理はクリエイティブな仕事
経理は、クリエイティブな仕事です。
単純作業ともいえる、日々のルーティンを回しながら、たくさんの発想力を必要とする仕事です。
熟練の経理マンや、会計事務所の担当者には、「カン」が働くことがあります。
「なんで、それ、バレた?」
というように、鼻が利くときがあります。
これは、日々のルーティンを回し続けて、育ててきた経理のものさしがあるから、少しでもズレたりすると、すぐに気づくのです。
経理ルーティンを形骸化させないポイントは、
ルーティンすることで、内部統制をとっていること
ルーティンすることで、新たな問題などの発見ができること
この2点につきると思います。
単純作業でも、脳は疲れるようです。
「なんか、飽きてきたな。」と思ったら、なにか改善できることが、きっとあるはずです。
ルールの見直しができたら、もう、「経理はツマラナイ」と思わなくなるでしょう。
経理の仕事に、少しワクワクできるようになれますように。