約25年前にいただいたオールドバー12年ものが、まだ、健在です。
このように、お世話した人から価値のある物をいただくと、半永久的に記憶が残っているものです。
専門学校に勤めていた頃、最終学年の学生は卒業論文を提出することになっていました。
私が担当していたゼミで、期限ギリギリまで、書き上げられなかった女子学生1人が、私の産休前までに残ってしまいました。
幸い、最終提出日が、まだだったので、産休に入っていましたが、特別に、自宅に来てもらい、臨月のお腹を抱えて添削指導をしてあげました。その時、
「先生、私の父がこれを持っていけといわれて・・・」
と、写真のオールドバー12年物を持参してきたのです。
その後の私は、出産育児が控えていたので、即いただくことができなかったのですが、今でも大切な時に、棚から出して、ロックで頂いています。
下戸で減りが恐ろしいほど遅く、香りがとんで、すでに純アルコール状態ですが。
空瓶を残すより、当時の嬉しさをお酒ごと残しておきたい気持ちで、飲み切る勇気がまだ、ありません。
私自身、お世話になった方に、きちんととした物を差し上げてきたかどうか、非常にあやふやです。
こんな私は、無礼なのでしょうか。そろそろ、年賀状を考える時期になりました。今夜は、このオールドバー12年を飲みながら、振り返ってみようと思います。
「気持ちは物で表わせ」と宣言した先生
この専門学校では、夏と春に合宿がありました。夏は水辺で。冬はスキー教程の受験を目指しての長期の合宿でした。
春のスキー合宿でのできごとです。
校内に、準指導員資格を持っている教員がいるので、その日の夜に、合否が確定します。
私は、スキーが上手ではないため、初めて板を履くグループを担当し、SAJ3級を目指していました。
合否発表後に、学生たちは、1週間ほど指導してもらった先生に、寄せ書きを渡す風習がありました。ご多分に漏れず、私は宿泊所で売られていたタオルに、たくさんのコメントを書いてくれたのをもらいました。
実は、検定試験の前日に、とある先生が、自分のグループにいる学生に、大きな声で宣言しました。
「いいか、おまえら(巻き舌)。気持ちは物で表(巻き舌)わせ。寄せ書きなんぞもらっても、オレはうけとら(巻き舌)んぞ!」
周囲の先生も、「はぁ?何言っちゃってんの?」でしたが、
「〇〇先生らしいわ。」で、みな納得。
そして、最終日の夜、その先生は、ご当地最上級の地酒一升瓶をプレゼントされたのです。
謝礼をこのように要求するのは、品がないです。
しかし、学生から見たら、このときに謝礼の意味を教えられたわけで、指導者として社会人になっても恥をかかないように教えて上げたとも言えます。
当時若かった私には、到底できるはずありませんでした。
本来どうすべきなのか「マナー」の意味
世間一般的に、この謝礼はどのようにすべきなのでしょうか。
盆、暮、正月に合わせて、「お中元」「お歳暮」たる風習が、日本に残っています。
外国には、サービス受けた毎の「チップ」がありますが、日本は、年間まとめての「チップ」に該当する贈答品を渡すシステムのように思えます。
特に、講師の先生に対しての謝礼は、封筒に現金(新券)を入れて、一言感謝の言葉を添えてお渡しするそうで、金額に定めはないが、低すぎるのも失礼に当たるそうです。
わけわかりません。
つまり、「世話になったわぁ。」の貢献度によって、金額や物が表れるのでしょう。
先の巻き舌先生のおっしゃることは、ある意味、正しいということになるのです。
気持ちの表し方は、それぞれでいい
さて、当の私はどうなのか。
恥ずかしながら、年賀状でさえおぼつかない状態です(笑)。
高価なもので、気持ちを表すにも、そもそも金欠だったりしていたら、無礼ということになってしまいます。
私は、心から有り難いと思える相手には、お誕生日や、久しぶりの再会のときに、プレゼントを差し上げてきました。
風習によるものではなく、その時の、お互いのタイミングで、気持ちを表していれば、それはそれでいいのではないかと思うのです。
お礼をすべきタイミングを逃しても、別の機会に、その時のできることをして差し上げる。
それで十分だと思います。
こう思うと、私も相手にとってピンポイントな物をセレクトしてきました。
コスメ好きには、発売即日完売のアイテムを(なぜか手に入る私です。)。
ガジェット好きには、欲しそうなものの新バージョンものを。
文具好きには、マニアが喜ぶ限定シリーズものを。
などなど。
共通の趣味を持っている親しい人に、気持ちを伝え合う。
そして、目上などそこまで親しくなかった間柄でも、お礼をすることで、互いの気持ちを近づける意味があると思います。
こどもには、目上やお世話になった人には、きちんとお礼をすることを伝えようと思います。
「気持ちは、物で表すんだよ。」