※好きで集めても使用期限が来て使えないコスメ達。投資した分を回収しきれていない。これもサンクコストです。
経営で、一番判断が難しいのは、事業撤退です。
資金が底突きたら、否応なしに撤退することになりますが、それだと、次への運転資金もなくなるので、絶対にやってはいけないことになります。
せっかく、資金投入して始めたのに、予定より遅れて回収できない状況に陥ることはあります。
そんなとき、今までやったことがないものなので、培ったカンが構築されていません。正しい決断をすることが非常に難しくなるでしょう。
その時の経営者の心理的バイヤスがかかるものです。
あとからもっと早く手を打てばよかったと、後悔しないため、基本的な考え方を予め知っておくとよいでしょう。
サンクコストとは
この「サンクコスト」という概念を知っておくだけでも、冷静な判断を導くきっかけになるでしょう。
サンクコストを、日常の言葉で言い換えると、「もったいない精神」です。
日常生活でのケースですと、
① せっかくここまで並んできたから、あともう少し並んでおこう。(長蛇のラーメン屋の前で時間を失う。)
② せっかくここまで揃えたから、捨てずにとっておこう。(先のコスメ達でお金を失う。)
③ せっかくここまで仕事をしたから、区切りのいいところまでやろう。(そのくせ、ミスが多くて、時間と労力を失う。)
おおよそ、このあたりでしたら、思い当たる節があると思います。
専門用語としての「サンクコスト」とは、日本語で「埋没費用」といい、時間、労力、お金を投資したあと、撤退や中止、縮小をした際、回収できない資金と労力のことをいいます。
事業で例えると、新規店舗を展開したが、集客が思うようにいかず、撤退しようと思った時、今まで投資した設備費用や人件費のことを考えてしまい、それらを回収しなくてはと思って、ついつい赤字を垂れ流してしまう状態です。
この「もったいない精神」のおかげで、経営者は早期撤退の時期を見誤るケースは、よくあるのです。
投資or無駄金の判定方法
では、このサンクコストによるバイヤスを、どのようにコントロールすればいいのでしょうか。
非常に難しい問題です。ケースバイケースなので、一言で、「これです」とは言えないのです。
毎月の早期月次決算によって、情報を拾い上げるしかありません。
① 売上高、粗利、営業利益をおさえておく。
うまくいっているか否か、社長の肌感覚でもわかりますが、肌という生体的感覚に頼っていると、必ずバイヤスがかかります。
特に、意に反する状況になると、とうしても都合のいい方に、判断してしまいます。これは、人間の常です。
そこを改善するには、早期に月次試算表を上げる仕組みをつくり、数字で状況を表現しておくことが大切です。
② 予め、ストッパーを定めておく。
損益分岐点をクリアするまでの期間を、決めておきます。
つまり、事業計画や予算をたてて、月次予実管理を行います。
そうすれば、すぐに異常値を感知することができます。
③ ストッパーを自分だけにしておかない。
できれば、第三者に止めてもらうようにするとよいです。
社長一人だけで、考えていると、いくら数値が出てきても、サンクコストがもったいない心情に押され、ストッパーを外してしまいます。
ここを、信用できる人に、ストッパー役を依頼しておくと、社長のバイヤスを外すことができます。
④ ストップのかけ方を決めておく。
完全撤退か、縮小か、中止か。縮小も規模をどのくらいにしておくのか。
具体的に決めておきます。
とにかく、異常値が出たときに、新たに決めていくのは、大きなストレスがかかります。予め決めておけば、実行するのみになるので、社長の心労も、随分と軽減することができます。
まずはスモールスタートから始める
資金が潤沢にある企業であれば、専門的に投資額と時期を算出することができますが、そうではない、小さな会社の場合、慎重に慎重を期すことが大切です。
投資事業としてお金を動かすわけではなく、事業を社会に還元することを目的なので、始めた事業を少しでも続けることが、第一優先事項になります。
となると、手元にある資金、借入しても返済可能である金額から、スタートさせます。そうです。サンクコストを極力少なくするのです。
元手が少なければ、下手な「もったいない精神」が稼働しないので、懸命な経営判断を下すことができます。
このように、小さいなら、小さいなりの戦い方があります。
小さいからこそ、生きるやり方を見つけたら、きっと大きな宝物になるでしょう。