気づけば、また数字がズレている。
会議のたびに「こんなはずじゃなかった」とため息が漏れる。
経理担当者はきちんとやっているつもりなのに、なぜか数字が合わない——。
これ、実はどの会社でも起こりがちな「あるある」です。
今回は、かつて経理・会計担当だった自分自身の経験も踏まえながら、
なぜ正しい数字があがらないのか、そしてそれを放っておくとどうなるのかを掘り下げていきます。

1人分のはずが、バグってズレて大量な食事に
「正しい数字」とは何か?
そもそも、「正しい数字」とは何を指すのでしょうか。
会計基準に則った処理がされている、というのはもちろんですが、
現場感覚で言えばもっとシンプルです。
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現場が「これだけ売った」「これだけ使った」と報告している数字
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経理が集計して出している数字
この2つが、ほぼブレずに一致していること。
これが、経営の舵取りに使える「正しい数字」です。
しかし、現実はなかなかそう簡単にはいきません。
なぜなら、数字を作るプロセスのどこかにズレが生じるからです。
正しい数字があがらない主な3つの原因
緊急対応に追われる現場
まず、現場の「緊急対応」が原因になるケース。
たとえば、急な発注や差し替え対応、トラブル処理など。
こういった緊急案件は、
「とにかく現場を回すこと」が最優先され、
本来必要な帳票や申請を後回しにしてしまいがちです。
結果、経理には正式な書類が回ってこず、
「いつ、誰に、いくら使ったのか」がわからない。
現場からすると「ちゃんとやったよ」なのですが、
経理からすると「記録がないので集計できない」というわけです。
担当者変更による伝達漏れ
2つ目は、担当者の異動・退職による引き継ぎミス。
例えば、
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取引先との取決め内容
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特別な支払いルール
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独自運用されていたエクセル表
こういった「暗黙知」が、担当者交代とともに消えてしまうことがあります。
引き継ぎ資料に書いてあったとしても、
細かいニュアンスやイレギュラー対応までは伝わりきらない。
その結果、現場では「いつものやり方」で処理され、
経理では「想定外」の数字が上がってきてしまう。
本人たちも悪気がないので、ミスに気づかず進行してしまう怖さがあります。
現場との温度差
そして、3つ目は「温度差」。
現場からすると、
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売上をあげること
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顧客対応を最優先すること
が第一であり、数字管理は「できればやりたくない面倒な作業」です。
一方、経理側は「正確な数字をあげること」が最重要任務。
この価値観のズレが、細かいミスや後回し、
最悪の場合は「適当に埋め合わせる」という事態を引き起こします。
たとえば、
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仮払金の精算が何カ月も放置される
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現場の手持ち台帳と本社の集計がズレる
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消費税区分を間違ったまま入力される
こういう小さなズレが積もり積もって、
正しい数字をあげることが難しくなっていきます。
このまま放置すると何が起こるか、そしてどうすればいい?
では、この状態を放置するとどうなるか。
結論から言えば、「内部統制の崩壊」です。
内部統制とは、
会社の資産を守り、不正を防ぎ、経営判断に必要な情報を正しく整える仕組み。
これが機能しなくなると、
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不正な支出や横領が見抜けない
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経営判断を誤る
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資金繰りに支障が出る
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税務調査で否認される
など、会社そのものがダメージを受けるリスクが一気に高まります。
特に怖いのは、不正が起きたときに「誰も気づけない」状態になること。
ズレが当たり前になり、誰も違和感を持たない——。
これこそ、静かに会社が壊れていく典型例です。
こうした崩壊を防ぐには、何をすればいいのでしょうか。
正直、万能薬はありません。
ですが、「まずこれだけはやるべき」という対策は存在します。
緊急対応にも必ず「事後処理ルール」を設ける
現場が緊急対応をするのは仕方ありません。
だからこそ、「後から必ずこれだけは提出する」という最低限のルールを作ります。
例えば、
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緊急時専用の簡易申請フォームを作る
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48時間以内にフォロー申請を義務付ける
など、現場の負担をできるだけ減らしながら、抜け漏れを防ぎます。
担当者交代時は「30分の口頭ヒアリング」を必ず実施する
書類だけではわからない情報を、必ず対面かオンラインでヒアリングします。
チェックリストではなく、
「普段どんなやりとりをしているか」
「グレーゾーンはどこか」
を聞き出すことがポイントです。
人の記憶にしか残っていない情報を、できるだけすくい取ります。
現場と経理の「お互い様」精神をつくる
温度差を埋めるには、経理側も歩み寄ることが必要です。
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なぜこの書類が必要なのか
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この手続きが現場にどう役立つのか
を、できるだけ具体的に伝えます。
押し付けるのではなく、「一緒に会社を守るためだよ」と共有することが大切です。
現場にとって経理が「敵」ではなく「仲間」になれれば、自然と情報の質も上がります。
正しい数字は「日常の積み重ね」でしか生まれない
正しい数字をあげるために、特別な技術や最新システムは必要ありません。
必要なのは、日々の小さな積み重ね。
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緊急時にも事後処理を忘れない
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担当者交代のときに口頭でニュアンスを引き継ぐ
-
温度差を少しずつ埋める
この地道な努力が、未来の大きなトラブルを未然に防ぎます。
数字は、人が作るもの。
だからこそ、ミスやズレは必ず起こります。
でも、それを許す文化を作るのか、正していく文化を作るのかで、
5年後、10年後の会社の姿は大きく変わってきます。
未来の自分たちが困らないためにも、
今日の一手間を、惜しまないでいきたいですね。
=編集後記=
【昨日のできごと】
早朝から会計業務。3月決算が多いので、踏ん張りどころです。
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