ここは、従業員4名ほどの小さな会社。
経理担当者であるAさんは、経理以外にも、総務法務雑務など、なんでもこなすスーパー社員です。
ある日、Aさんは、社長に呼び出されました。
「今日から、君は我社のDX化のチーフとして役目を担ってほしい。
予算は、残念ながらない。補助金使うにしても、まずは元手がかかるから。
ただ、ほしい人員がいたら、遠慮なく言ってくれ。」
さて、Aさんは、どうしたらいいのでしょうか。
ツール選びより先にすること
いくら器用にいろんなことをこなせるAさんでも、いきなり「DX」と言われても困ってしまいます。
なぜ、社長は、Proである外部に頼まず、社内の経理担当者に白羽の矢をたてたのでしょう。
社長の意図は、「予算かけず」「自分たちの風土似合った」「コンパクトなしくみ」であることです。
まず、社長の意図を汲み取るところから始めます。
いきなり、どのツールを使えばいいのか、探したりしないようにしましょう。
今の仕事の仕方が、正しいとは限らないからです。
経理担当者にしかできない設計とは
経理担当者にしか見えないものとは、お金が入りから、出るところまで、すべてです。
これは、どんなに稼いている営業や製造部門の人でも、知り得るものではありません。
キャッシュフローともいいますが、ここでは、「お金の出入り」の方がピンとくるはずです。
つまり、営業の仕事、製造の仕事、経理財務の仕事、社長など経営者の仕事のすべてを、把握しているのが経理担当者なのです。
専門的に言えば、「売掛金管理」「原価計算」「資金管理」「予算管理」「管理会計」など、会計に関わるすべてでしょうか。
唯一、これを把握しているのが、経営者と経理担当者だけです。
経営者は、決済する側の人間なので、創意工夫して経営者に提案するのは、経理担当者の仕事になります。
経理担当者にしかできない設計とは、会社のデータを部署ごとに分断されません。
往々にして、システム設計をする際、どうも経理会計は別世界として認識します。
下手に、手を加えると、経理担当者やバックにいる顧問税理士のおメガネに叶うとは限らないからです。
その点、経理担当者は、問題があればだれに相談すればいいか、わかっていますし、相談もできます。
実際、経理処理で困ったことがあれば、相談者への懐にスッと入る唯一の立場でもあるのです。
このように、まず、全社の業務がどのように流れているのかを、しっかりチェックします。
現状のワークフローを作成してみるところから、システム設計が始まるのです。
各セクションの担当者を招集+部署ごとの業務の断捨離
さて、経理担当者の目線で、全社のワークフローが出来上がったタイミングで、各セクションの担当者とチームを組むことになります。
これが、第二段階です。
経理の視点と、現場の視点は、違って当たり前です。もしかしたら、気づかない業務が、見つかるかもしれません。
そのために、現場担当者に、先程作成した全社ワークフローに、追加訂正をかけてもらいます。
こうして、まずは、正しく書かれた現状を一旦見直していきます。
おそらく、見つかるものは、同じデータを何回も色んな人が入力作業をしている現実がでてきます。
また、せっかく入力しているのに、経理で全く利用されていないものもあるでしょう。
このように、無駄にやってしまっている業務をピックアップしていきます。
これらは、断捨離をするか、または活用していくのかを、判断しましょう。
このDX化プロジェクトチームでは、自分の部署だけではなく、他部署にどのようにデータが活用されていくのか、知ることが大切です。
会社全体を見渡せる「メタ的視点」を持つことが、実はこのチームが結成された意味があるのです。
ワンアクションからマルチに活用する
基本、データは、一回入力されたら、データの活用は仕組みに任せるのがセオリーです。
例えば、仕事の受注をした場合を見てみましょう。
よくあるアナログなしくみ
- 営業で受注したら、製造に情報が行くようになっている。(営業にて入力)
- 製造にて、ラインに載せるために設計する。(製造の台帳に、また入力)
- 出来上がったら、売上台帳に入力する。(またまた入力作業)
- 請求書作成のために、再度入力する。(……入力作業)
- 経理にて、会計ソフトに仕訳入力をする。(もう、いい加減に入力)
- 銀行に入金されたら、また、仕訳入力をする。(……)
同じ数字を、6回も入力しています。
DX化のしくみ
- 営業で受注したら、データベースに入力する。
- 製造で、その1.の情報をデータベースから引っ張ってくる。
- 経理にて、請求書作成する。(データベースから引っ張ってくる。)
- 会計ソフトに仕訳をインポートする。(ここでもデータベースから)
- 入金明細一覧を作成する。(同じく)
- 銀行に入金されたら、入金明細から仕訳を引っ張ってくる。
入力作業は、たったの1回のみ。この情報を、各部署で加工して台帳を作成していきます。
1.から6.まで、進むにつれて、それぞれ完了時にフラグが立ち、それを目印にデータを拾い出すのです。
DX化とは、このように、一つの数字が、何度も入力することもなく、みんなで活用できるようにすることを言います。
このやり方だと、逆に邪魔になってしまう業務が見つかってしまうかもしれません。
でも、そこは理屈を明確にして、やめる選択をするようにします。
これが、社内DX化なのです。
究極の効率化は、全社員の共通理解
ここまでやって、いままでのやり方に固守する人も、必ず出てきます。
これは、人の資質というよりは、組織に必ず発生する症状のようなものです。
変化には、大きな代償が伴います。
頭ではいいことだとわかるけど、今までの業務がデフォルトになっていると、改めて仕事を覚え直す手間が生じるので、本能的に「避ける」ようになります。
問題は、それに甘んじて、今までと変わらない仕組みに、ただツールが充てがわれてしまうことです。
このような、よくある落とし穴に、ハマらないようになるには、どうしたらいいのでしょうか。
それは、全社員が、会社の歯車ではなく、血肉になっていることを自覚することです。
お金という酸素が、どのように取り込まれているのか、どのように老廃物を吐き出しているのかを、全員が知っているということです。
何処か問題があれば、経営者は医師の視点で、問題を解決します。
しかし、自己免疫機能は、社員自ら動かなければ、発動しません。
たんなる経営理念を唱えるだけでは、ここまで行き着きません。
自分の仕事が、他部署にどのように波及しているのかを、知るところから始まるのです。
ツールの選び方
ここまできたら、あとは、最適なツールを見つけるだけです。
残念ながら、大金を払って、システム作っても、各部署のシステムが連携できていなければ、会社の血管として、全社に張り巡らせることはできません。
また、一つのシステムで全社を網羅させることも避けたいものです。
それぞれのツールが、自然と連携取れるような仕組みを導入することを目指すのが、一番最適です。
技術的に、様々な方法があります。
本当に規模が小さいのであれば、人の手でデータを拾い出すこともありでしょう。
一旦作ったものが、うまくいくかどうかわかりません。運用しながら修正をかけて、どんどん研ぎ澄ませていくのです。
ある程度、データ量が多いのであれば、無料で使えるGAS(Google Apps Script)、API連携を自分で構築できるMakeなど、安価に構築できる方法も多岐に渡ります。
システムを外注することも、選択肢に入るでしょう。
ただし、今のやり方でシステム化を依頼すれば、いずれうまく機能しなくなるリスクが高いです。
外注する前に、まずは社内で業務の見直し、つまり業務改善をすれば、より自分たちで使いやすい仕組みを導入することができます。
一人の経理担当者から始まる社内DX化。
ここから、会社が一つになる道が始まるのです。
=編集後記=
【昨日のできごと】
自宅で、オンライン業務をしながら、その合間はオフ。
じっくりと休みました。
かずこのお気に入り
日常の中で見つけたお気に入りを、NotionページにUPしています。
今、 町中華のかた焼きそばにハマっています。
50代からのひとり仕事を楽しむ
ひとり仕事の格言、ブログ・You Tube更新を配信。
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