2022年1月から、電子帳簿保存法が改正されます。
① 電子帳簿保存・・・会計ソフトで作成した帳簿・書類をデータのまま保存
② スキャナ保存・・・紙で受領・作成した書類を画像データで保存
③ 電子取引・・・電子的に授受した取引情報をデータで保存
これらの取引の証拠の保持方法に影響があるというものです。
法律の改正については、専門家に確認していただくのが一番いいので、ここでは実務で、何が起こるのかを整理してみようと思います。
紙から画像データの時代へ
スマホを持つ人が多くなりました。
スマホを各社通信会社が分割で契約者に販売するのが当たり前になり、誰もがスマートホンを持つようになりました。下手すれば、家族それぞれ、携帯電話としてスマホを持ち歩き、家族間コミュニケーションもSNSを介して行われるほどです。
そして、いつでも写メで紙媒体の情報を、画像で取り込むことができるようになりました。
これにより、一気に時代は、紙から電子に移行できるようになりました。
バーコード決済なども浸透し、今では財布なくてもスマホを持っていれば、買い物ができるほどです。
このように、紙によるやり取りから、本格的に電子保存する方向に、国も推進するようになっており、それが、2022年1月からの「電子帳簿保存法改正」になるのです。
今までなら、電子保存する際、所轄税務署に申請する必要があったのですが、今回の改正で、それが廃止になりました。
そして、クラウド型会計ソフトの普及により、格安でタイムスタンプなどの要件が付与されたサービスが気軽に使用できるようになりました。
これにより、大掛かりなシステムがなくても、スキャナ保存を取り入れるようになったのです。
変化に伴う障害
今までの経理処理の流れを、大幅に変更しないと、この「スキャナ保存」をすることができません。
これについては、以前ブログでまとめています。
仕事の流れを変えるとは、住む場所を引っ越しするに匹敵するエネルギーが必要になります。
また、仕事の変化は、ミスを誘発するリスクもあり、間違いを起こしてはならない経理担当としては、なるべく避けたいと思うのが心情です。
また、慣れないガジェット(スキャナーやサーバーなど)を導入することで、想定していない不都合が生じることがあります。
お金をかけて、それ専用のシステムを組めるのであれば、そういったことは起こりませんが、予算かけずに、自分たちでやりくりした場合、思いもしないところで、データが取り込めなかったり、作業がストップしたりします。
また、スキャナを入れる従業員に、うまく伝わらず、きちんと取り込めないこともあるでしょう。
それを恐れて、導入を見送る決断をするケースも散見します。
未来の姿を考えて結論を出そう
領収書のスキャナ保存導入を取り入れるのか、今まで通りにするのか。
いずれの判断をする必要があります。
なぜなら、Amazonなどの電子取引による領収書等は、電子で保存しなければならず、今までのように紙に出力してファイリングすることができなくなったからです。(電子取引データ保存の義務化)
これを機に、紙の帳票も、スキャナ保存することで、業務全体の効率を向上させることができます。
しかし、スキャナなどの機器を導入する際に起こる、一定数の不都合を懸念して導入しない決断もありえます。
この場合、未来5年を見て、決断したらいいと思うのです。
まずは、社会がどの方向に行こうとしているのか。国がどうしようとしているのか。今現在すすめている政策から推定することができます。
なぜ、バーコード決済で国を上げて値引きが行われていたのか。
なぜ、マイナンバーカードと電子決済アプリの連携を進めていたのか。
これらから、これからの主流がわかるでしょう。
もし、事業をどんどん展開していきたいと考えるのであれば、未来を想定して早めに導入すべきです。
逆に、ほそぼそと事業をゆくゆくは縮小していこうと考えるのであれば、無理してお金をかけてスキャナ保存をする必要はないと思います。
新しく仕組みをつくるときは、絶対うまくいかないと思っていたほうがいいでしょう。それを踏まえ、また、パソコンや周辺機器についての知識、サーバーの仕組みなど、やりながら勉強していく意気込みがないと、乗り越えることは難しいかもしれません。
私は、どんどん取り入れていくべき、というスタンスです。
経理は、ただ記帳する作業ではなく、その先の「考える」ことが大切です。これからの経理は、「考える」「分析する」ことが主体となるので、データの取り込みをスキャナで対応して、チェックや分析に時間をかけて、未来の数字を守ることを積極的に取り入れるべきでしょう。
そして、会社全体で、積み上げているのだという文化が根付くきっかけとして、スキャナ保存を取り入れるといいなと思うのです。
法令が変わったからやる、ではなく、社内の経理文化を変えることに利用する、といった気持ちで進めてみたらいかがでしょうか。