グレーにごまかすか、色鮮やかに鮮明にしておくか。
たった一つの経理処理が、その後の方向性に影響を与えます。
経理処理は、とても面倒な仕事です。
会計基準や税法にそって、原則通りに処理するためには、大きな労力を要します。
そのため、中小企業などの小規模な事業体に対して、簡便的な処理が認められています。
しかし、簡便を通り越して、法令違反に見えるような処理をしてしまうケースがあります。
なぜ、そのようなことが起こるのでしょうか。
グレーにせざる得ない事情
大企業の場合、バックオフィスには専門部署を持つことができます。
法務、経理、財務、人事、総務などなど。
役割を明確に分けて、仕事をします。また、内部統制も充実しており、チェック機能も働いています。
しかし、中小企業などの小規模の事業所の場合、人員にそこまで割くことができません。また、営業、経理、総務までこなす社長となると、一々細かい処理まですることは現実的ではありません。
一人で、経理や営業を行っていたら、経理処理のチェックをしてくれる人もいないので、知らぬまま間違えた経理処理をしてしまうことがあります。
このように、グレーな処理をしてしまうことがあるのです。
ロマンスグレーかごま塩か
ここで、大事なのは、グレーな処理をして当たり前と思うか、なんとか正しい処理をしようと思うのか、この経理に対しても意識の違いです。
「所詮、中小企業だから、できない。だから、グレーな処理をしていいのだ」と、半ばあきらめと開き直りの考えを持っていると、どんどん、グレーが重なって、気づいたら、クロに近い状態になっていきます。
確かに、中小企業の経理には、グレーな処理で逃げざる得ない状況もあるかもしれません。
しかし、オンラインゲームで、たった一人だけルールを破って勝負の土俵に残り続けることをしても、いい勝負ができないのです。
一旦、逃げたら、ずっと、逃げ続ける処理をし続けるはめになるのです。
同じグレーでも、きちんと手入れをして小綺麗なロマンスグレーにするのか、逆にそのままほっといて小汚いごま塩になるのか、この心がけ一つで変わってきます。
認知行動療法としての経理
私は、二通りのパターンを考えています。
現状のまま、とにかく、なんとか逃げ切りたいと切望するケースと、今の状態から成長させたいと希望を持つケースの2つです。
前者であれば、社長が経理にも責任持って行い、自分自身で最後までやるのであれば、あえて、それを変えることはしません。
しかし、後者のように、自分のビジネスが社会の中で広がりを持たせたい、社会に影響力を残したいと思うのであれば、弱者的な経理から、正当な経理を行うことを勧めています。
まして、経理担当者など、社長以外の人が経理をするのであれば、グレーな処理を要求するのはコクでしょう。
実際、グレーな処理を要求され続け、疲弊していく経理担当者を何人も見てきています。
逃げたい気持ちをぐっと抑え、正しい処理をすることは、一つの習慣化、トレーニングに近いものだと思うのです。
正しい経理は、一種の認知行動療法だと考えます。
認知行動療法とは、出来事に対して瞬間的に浮かぶ考え(自動思考)で、ストレスが生じるとき、この自動思考に対して行動で働きかけてストレスを軽くする心理療法の事を言います。
一つの取引があって、それに対してグレーな処理をしたいという欲求が出た時、あえて経理を正しくしていく。このループを繰り返すことで、感情や思考が正されていくということです。
この行動を決めるところを、経理のルールを当てはめるようにすれば、自ずと経営もブラッシュアップされてきます。
しかし、手間がかけられないのに、経理に時間を掛けるのは本末転倒ではないのか。
というお叱りの声も聞こえてきます。
ここで、資金を投入しなくても、知恵を使って工夫するのです。
なんとか、経理を正し、経理を効率化することで少人数でも正しい経理ができるようにする。
それによって、小さい会社などでも、大きな戦略を持てるように思考に余裕が持てるようになるのです。
大きなシステムを入れるのも良いし、経理フローを見直して効率化を求めてもよし。やり方は、それぞれあります。
ちなみに、私が考える経理戦略は、システムを外注するより、自分たちの手で工夫する方法を考えることをお勧めしています。
もし、ビジネスを広げて、多くの人達に影響を与えたいと願う経営者の方は、一度ご自身の経理を見直してみては、いかがでしょうか。
今まで知らなかったフィールドが見えてくるかもしれません。