私の内面は生まれ育った地域に根付いております。
このことについては、3つの幼稚園に通った結果どうなったか
をご覧いただければ、おわかりかと。
幼少期に3つの宗教に触れて育ち、実家では古き良き時代の価値観で怒涛の時代を生き抜いた話しを聞かされ……。
つまり、いろんなカラーを抱えて今に至っているわけです。
でも、ひとつだけ、私の中で大事にしているものがあります。
それは、京都の金閣銀閣寺で有名な相国寺に保管されている、とある漫画でした。
十牛図との出会い
5月の終わり、私は、東京渋谷の天狼院書店でNotionセミナーに登壇したその帰り、東京上野にある東京芸大美術部にある博物館にいってきました。

東京芸術大学にて
その日は、展示会の最終日でした。
それも、閉館ギリギリ。
でも、私の目的はただ一つ。「十牛図」です。
そして、ついでというわけではありませんが、伊藤若冲が描いたものくらいです。
でも、しっかりと、他の展示物も見学することができました
室町時代の混乱期の中で創立されたお寺であるだけあります。
当時の僧侶たちが、うごめく時代と人の心に対峙し必死に考え、それを記録に残してきた形跡は、まさに「Notionじゃないか!!!」と共感を覚えるのです。

当時の寺の文化活動をナレッジとして書き溜めたもの「隔蓂記」
展示されている中、十牛図を見つけたときは、少し目に涙が溜まります。
本物を観て、やっと会えたと長く恋い焦がれた少女時代に気持ちが戻りました。
写真よりも、実物はとても繊細な線で描かれており、「悟り」をいかに万人に伝わりやすくできるか、思慮を重ねたあとが垣間見れました。
十牛図との出会いは、NHK教育テレビ(現Eテレ)のNHK市民大学シリーズでした。
ここで、当時京都大学の河合隼雄さんが講師となって、日本人とユング心理学というテーマで、日本人のこころにあるアイデンティティを丁寧に解説していました。
日本人の文化は、京都の神社仏閣にに保存されているものが古くからあります。それらとユング心理学との共通項を紹介する内容は、自分の中にある何者かをクリアにするきっかけになり、その後私は臨床心理士をめざすようになったのです。
そうしたなかで、十牛図を紹介されたとき、当時中学生だった悩み多き女子だった私は、一つの柱を得たような自信につなげることができました。
おかげで、どんなに学校で孤立することがあっても、腐ることがなくなったのです。
それから、一番苦しいとき、私は十牛図の中で、どの段階なのかを想像するようになりました。
でも、しばらく、おとなになって日常に追われるようになると、少しずつ忘れていったのは事実です。
十牛図をざっくばらんに解説してみる
今回の相国寺展で購入したガイドを参照しながら、十牛図について紹介してまいります。
十牛図は、禅のさとり段階を表した漫画です。
一つのことを進めようとするとき、なぜ失敗するのか。
それは、この十牛図を読み解けば、原因はすぐにわかります。
私独自の解釈、そして、私のひとりビジネスの過程を交えながら、解説していきます。
(著作権を考慮し、展示物を見ながら鈴木本人がイラストを書きます)
尋牛(じんぎゅう)牛を探す
広い野原に少年が一人。牛を探す旅が始まります。
これは、突如ひとり仕事を始めたときの私にそっくりです。
自分に何かが足りないという思いが締めている状態で、右往左往しています。
見跡(けんじゃく)牛の足跡を見つける
少年が牛の足跡を見つけます。でも、まだ牛本体を見ていません。
もしかして、これなのでは?おぼろげながら、情報がない中で、方向性だけは決めている状態になります。
当時のわたしは、とりあえず今までやってきた「経理・会計」を足がかりに、ひとり仕事を始めることにしました。
見牛(けんぎゅう)牛を見つける
なんと、足跡を辿ったら、牛を見つけました。
でも、どうしても牛に追いつくことができません。
もしかしたら、まだ、私自身、ひとりビジネスを見つけたけど、まだ捕まえきれていないのかもしれない、そんな不安を抱えている時期がありました。
本当に満足したサービスを提供できているか。自問自答してもがいている時期です。
このとき、私はNotionと出会い、経理の現場で使えるかどうか、圧倒的に模索してブログやYouTubeで発信していたときでした。
得牛(とくぎゅう)牛を捕まえる
なんとか牛を捕まえることができました。
でも、牛は言うことを聞いてくれません。
ひとりビジネスの場合、メニューが決まって営業を始める段階ですが、なかなか思い通りにいかない状態にすごく似ています。
でも、これでビジネスを始める!と決意し、一番モチベーションが上がっている時期でもあります。
自分の中で、新しい生き方をみつけたのです。
牧牛(ぼくぎゅう)牛を飼いならす
捕まえた牛を、なんとか一緒に行動できるようになります。
そして、絶対に牛を逃さない決意をもって、必死にもがき始める状態です。
まさに、これ。ひとりビジネスでの最初の壁になります。
始めたがいいが、なかなか軌道に乗らない時期、自分の勝ち筋がいまいちみえていない時期です。
最初の苦しい段階ともいえるでしょう。
騎牛帰家(きぎゅうきか)牛に乗って家に帰る
牛の背中に乗れるようになります。
ヒョウヒョウと笛を吹きながら、家路につきます。
人と牛が一体となります。
ひとりビジネスの場合、自分の勝ち筋(売上の立て方)が出来上がり、自分の生活を支えるまでに、安定化されます。
なかなか、ここまで行くのは並大抵ではありません。
そして、大抵の人は、ここがゴールだと思っています。
忘牛存人(ぼうぎゅうそんにん)牛を忘れて人として生きる
牛を忘れて人であることに立ち返ります。
帰るべき本来の家に戻ることで、自分自身のあり方を見直します。
この境地に至るということは、一旦ひとりビジネスを手放すことを言っているのだろうかと、私には答えが出せていません。
もしかしたら、今やっていることではなく、本来の自分がやるべきことがある事実に気がつく状態のことかもしれません。
人牛倶忘(にんぎゅうぐぼう)人も牛も忘れる
牛も自分も忘れ去られた境地です。
仏教でいう「空」。「円相」とも言います。迷いも悟りも形跡がなくなります。
ひとりビジネスの場合、この状態に至るのは、経営さえも手放したときなのかもしれません。つまり、何もしなくても事業が回っている状態です。
それとも、無理して行動しなくても、背伸びをしてがむしゃらにやらなくても、自然とひとりビジネスができている状態なのかもしれません。
本当に、この境地は、私にとっても未知数なのです。
返本還元(へんぽんかんげん)真の自己に戻る
空に一旦なったあと、本来の自分に戻ります。
実は、自分の周りには自然があって、思っていたより豊かなものであることに気がつきます。
べつに牛じゃなかった。すでに自分にはいろんなものが備わっていたことに気がつくのです。
入鄭垂手(にゅうていすいて)悟りの境地に達する
もう、俺が主役!という発想がありません。
まだ悩んでいる人がいる場所にいって、人のために尽くします。
それも、自分本来の姿を持ちながら、また、自分探しの旅が続きます。
これは、ひとりビジネスでいうならば、自分の歩んできた道で、同じ悩みを持つ人に手を差し伸べます。
でも、人生生きている間は、仕事が続きます。また、新たな牛を探すこともあるでしょう。
ひとりビジネスを長く続けるためにできること
ビジネスは、経済を活発にするものであり、市場を熟成させていく役割もあります。
でも、ひとりビジネスは、市場というより、ビジネスをする本人の生き様を社会に共有するものかもしれません。
形式に落とし込むとしたら、その人を中心にしたコミュニティを形成し、需要と供給の関係が近いビジネスモデルとも言えるでしょう。
でも、形にこだわってコミュニティ形成を急いでしまうと、まさに牛に振り回されてしまいます。
コントロールするわけでもありません。
仕事と自分自身が一体化して初めて、ひとりビジネスの価値が社会に受け入れられるのです。
もし、長くひとりビジネスを続けようと思うなら、この十牛図を何回も繰り返して自分自身と一体化することでしょう。
人生って修行だな。
中学生のときに出会った「十牛図」に、今になって助けられていることは、まさに、ループして自分探しをしていることなのでしょう。
=編集後記=
【昨日のできごと】
やっと、最後の5月締め業務を完了。
あとは、定期提出書類待ちです。
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