値引き交渉の功罪

近所のファミレスから。お値打ち価格でのご案内。By iPhone 12 mini

 

税理士事務所に勤めていた頃、顧問契約をする際、値引き交渉を受けることがありました。

正直なところ、値引きをお願いされたときは、お客さまにやっていただく作業をお願いするしかありません。

しかし、そうはいっても、お客さまができることも限られており、頭を悩ます一つでもあるのです。

 

値引きすると何が起こるのか

 

会計事務所では、値引き交渉された場合、訪問回数の減少と自計化のお願いがセットになるケースが多いです。

そこで、両者の落とし所を探って、顧問料が決まってくるのですが、

正直、料金表の意味がないなぁと思うことも、しばしばありました。

 

私は、記帳代行よりは是非とも、自計化を目指して、経理を覚えていただくことは大切だと考えています。

 

しかし、このような値下げを受け入れられる事務所は、犠牲を払っていることも確かなのです。

職員に無理言って、働いてもらうのか、他の正規の顧問料を支払ってくださっているお客さまに、甘えるのか、

何かしら、よくないスパイラルが発生するのです。

 

自分で、正しく、作業ができるのであれば、値下げ交渉されても、こちらも話がしやすいです。

しかし、何も知らないところで、ただ、「値段下げてよ」と言われてしまったら、

会計事務所の言わんとすることを、理解しないまま、話は平行線になってしまいます。

 

 

単価には理由がある

 

会計事務所の仕事は、訪問と申告書作成の他に、チェック作業で占めています。

一社の決算書や申告書には、「作成者」「一次チェック」「二次チェック」「税理士チェック」が入ります。

そして、無事、申告書にOKが出ると、「電子申告の手続き」「申告後のチェック」「控えの製本」「製本チェック」など、たくさんのチェック作業が待ち受けています。（事務所によって異なりますが。）

 

一箇所間違えるたびに、作成者に戻り、また、チェックを繰り返していきます。

 

このように、単なる紙の束には、たくさんの人手が関わっています。

また、チェックするための知識のブラッシュアップまで含めると、監査担当者の勉強時間も膨大なものになるのです。

社長が、交際費を使って飲み食いしている間、彼らは、勉強を続けているわけです。

 

ここまで言ってしまうと、元会計事務所職員のぼやきに聞こえてしまうかもしれませんが、

事実、この仕事を安い給料で請け負っていることを考えると、正規の報酬をお支払いするわけをご理解いただけると思うのです。

 

その対価を支払う覚悟を含めてサービスである

 

良いサービスの定義は、人によって異なります。

安く、そこそこでやってくれたら、それこそ、ちょうどいいサービスですし、

会社を大きくしたくて、成長を望むなら、それなりに税理士に絡んでもらえる報酬をお支払いすることになります。

 

しかし、自分の稼ぎによって、支払い能力に影響を受けることも確かなのです。

 

私は次のように、考えれば、値引き交渉しなくても、両者win-winでうまくいくと考えます。

 

まずは、自分で経理をしてみる。

一番、格安であり、規模が大きくない時だからこそ、経理を知る機会でもあります。

 

やりたいことばかり要求しない。

「報酬払えないけど、これだけやって。」は、絶対に禁句です。

やってほしければ、払う覚悟を示し、単年単位ではなく、数年単位での報酬交渉をすると良いです。

これは、会社の今後を想像する練習にもなり、社長にとっても、いい機会でもあります。

 

それでも正規の料金を支払うことができなければ、やめる

社長には、会社を大きくする夢があります。

そのために、やってほしいことがたくさん湧いてきます。

しかし、それをお願いするだけの報酬が支払うことができないのであれば、

それは、今、やるべきではないのです。

事業を大きくしたい場合、それなりの資金が必要です。

今できることを、誠実に積み重ね、余剰金を増やして自己資本比率を上げることができたら、

そこで、初めて専門的なサービスを依頼する方が、会社にとっても幸せなのかもしれません。

 

業種にもよるでしょう。値引き交渉が当たり前の場合もあります。

しかし、会計事務所が値引きを渋るには、すでに利益がない状態であることが多いのです。

 

もし、値引きしてもらったら、ラッキーと思わず、

提示された金額には、さまざまな訳があることを、知っていただきたいものです。