メルマガ「50代からのひとり仕事」(登録無料)

技術会得術 競泳選手から学ぶ

  • URLをコピーしました!

RSS

follow us in feedly

※競泳練習三点セット 足ひれ、プルパドル プルブイ

目次

東京オリンピックが終わり、これからパラリンピックが始まります。

なぜ、あんなに早く泳げるのか。そもそも、あれだけの筋肉をつけなければならないのか。

画面越しに、思うことたくさんありましたね。

選手たちと自分は同じように練習しているのに、なぜ、彼らはあんなにすごいのでしょう。

 

水泳の指導経験がある私には、人が水泳を覚える過程で会得するものが何なのか、少し理解しているつもりです。

ものを覚える、技術を身につける、その過程に人はどう変化するのか。

水泳初心者が、泳げるようになるファクターを例に、考えてみます。

競技の本質 自分との戦い

 

競泳、体操競技、ウエイトリフティング・・・。

これらは、ひとりで競技行います。

 

早く泳ぐのか、手を抜くのか。トレーニングに立ち向かっていくのか。

すべて、自分次第です。

 

オリンピック選手クラスになると、ほぼ、自分のメンタルとの戦いです。

自分の弱さと対峙し続けるという苦行を乗り越えた人だけに、栄光が輝くのです。

 

残念ながら、私は選手として最低でした。

コーチに歯向かう、いやな試合には思いっきり手を抜く、練習にがむしゃらにならない等など。数え切れないほど、悪態をついていました。

その後、人に教えるようになってみると、私は水泳が好きだったのに、孤独に耐えきれなかったことがわかってきたのです。

 

実際の試合は、どんな感じなのか。

飛び込み台に上がって、スタートを構えるまでは普通の日常ですが、入水した瞬間、体中の皮膚が水にさらされて、何かのスイッチが入ります。そして、耳から入る音も、すべて変わります。目にはゴーグルがありますが、水の中は基本、ぼんやりしています。

すべての五感が、シャットアウトされた感覚になるのです。

そして、その中で、今まで練習してきたことを、思い切り発揮します。

壁にタッチして、周囲を見渡すまで、ずーっと一人です。

 

この、孤独に耐えられるか。

これが、泳ぐ人すべてに与えられた条件だと思ってよいでしょう。

 

入水時の肌感覚を敏感に

 

プールに飛び込んだときの、ヒヤッとした冷たさ。

液体の中に全身が包まれる感覚。

身体中の皮膚に当たって流れていく感覚。

 

先の競泳の試合での、飛び込んだときの感覚とおなじです。

この感覚を楽しめるかどうか、これが上達の際スピードが違ってきているのです。

 

小さな子どもに、水泳を覚えてもらう最初の段階が、「顔に水をつける」です。

顔全体が水に覆われる感覚を覚えることで、水中に潜るきっかけになるのです。

顔には、鼻と口があって、酸素を吸います。それが水に覆われることで、ある種の生命の危機を感じるのです。そこをどう乗り越えるか。一番最初の自分との戦いになります。

そして、もう一つ意味があります。

水に対する思い込みが激しいとなかなか、水に顔をつけることができません。

この葛藤の中で、水の特性を感覚でつかめた子どもから、水慣れを卒業していくのです。

 

ここを誘導するのが、コーチの役割です。

言葉かけだったり、遊びから慣れていったり、あるいは強引だったり。

あの手この手で、子供たちに、水の特性を肌で感じてもらいます。

この時期に、しっかりと皮膚感覚と筋肉と頭脳がリンクできた子どもは、上達が非常に早かったです。

 

私が属していたYMCAというところは、この初期段階で「ボビング」を昇級試験に取り入れていました。

しっかり潜って息をゆっくりはいて、ジャンプと同時に全部息を吐き切る。

ジャンプの勢いでまた、水の中に全身沈み込ませて、ジャンプするの繰り返し。

 

 

※ボビング 千葉県教育委員会より

 

息は吸うのではなくて、吐き切ることで肺に空気が入る感覚を養います。

そして、ジャンプによって起こる水流が、身体にそって流れる感覚も覚えます。

この「ボビング」をしっかりやるのと、やらないのではその後の上達度に雲泥の差が生じます。

それほど、身体に感じるものを会得するということは、とても大切になってくるのです。

 

水流に身を任せることから始まる

 

このことを最初に覚えるのが、「蹴伸び」です。

水流ににのって、前進する最初の過程です。先の「ボビング」をしっかりやった子どもは、蹴伸びに力を抜くことができます。

この「ちからを抜く」が水泳を覚えるのに一番必要な感覚です。

泳ぎこむようになると、この「力を抜く」技術が、タイムを縮める要因になります。

泳ぎ込んで、疲労困憊になったところで、新しいフォームを覚えさせることは、よくやりました。

まだ、元気があるときは、いままでの癖を絶対に手放そうとしませんが、疲れ切ると、どうでもよくなって、不思議と全身のこわばりがなくなってくるのです。

このときが、フォーム矯正のチャンスでした。

 

なぜ、力を抜くことが必要なのか。

 

人が力を入れるときは、その人の頭から司令だして力をいれます。

しかし、水の流れは、自分が決めて流れているものではなく、自然に発生して、すでに決められた流れになっているのです。

いくら、自分が正しいと思っていても、実際の水の特性は違っています。

 

なので、皮膚感覚でいち早く水に乗ることを分かっておくことが、上達のコツなのです。

その感覚は、水慣れの時期に養わないと、永遠にわからないのです。

 

ひたすらドリル練習

 

おとなになった我々には、もう水の感覚を養うことができないのでしょうか。

 

そんなことはありません。

大人ならではの、ハイブリットなトレーニングを行うことができます。

 

まずは、頭から。知識で水の力学を理解します。

そして、身体で覚え込む。これがドリル練習になります。

そして、疲れ切ったところからのフォーム矯正をします。

 

これを、PDACサイクルのように繰り返します。

 

水の流れに身を任せるもう一つの理由は、「パワーを出すポイントを探し出す」ことです。

全身を水流に預けた状態で、見つけ出していくのです。

実は、水泳が孤独なスポーツと言われる所以がここにあります。

パワーポイントは、自分で探し出すしかないのです。

 

競泳選手の身に纏っている筋肉は、このための筋肉です。そのため、陸で発揮する筋肉とは異なっています。

流れる水に対して、パワーを与える筋肉は、質感が非常に柔らかいです。

 

スポーツインスタクター養成学校で指導していたとき、ダンス系の生徒は、この感覚がなかなか理解できず、上達が遅い傾向がありました。

自分を動かすためなのか、周囲の水に新たな水流を生み出すための筋肉なのか。

全くもって、違うことを知ることから、水泳の上達が得られると思ってよいでしょう。

 

新しい仕事、新しい技術、新しい事業を会得するには

 

長々と、水泳指導を熱く語ってきましたが、実は、この水泳の上達の過程が、日常生活にも当てはまると思っています。

 

職場で新しいソフトを入れるとき、新しい仕事の仕方を導入されるとき、おとなになってから水泳を始めた人と同様な障壁があります。

いままでのやり方が通用せず、上手く対応できなかったり、抵抗を示したりします。上からの命令から変えさせられたのなら、なおさら、抵抗を示します。

しかし、自分から選んだ環境であれば、ここは水慣れで感覚を養うように、自分に新たな感覚を養っていくしかありません。

こどもなら、遊びから慣れていけますが、残念ながら、大人は頭で理解するという能力が長けています。まずは、得意な方法で、状況を知るところから入って、あとは繰り返しながら、トライアンドエラーして、自分にとってのパワーポイントを探し出すしかありません。

そのときは、非常に孤独です。

しかし、自分で自分のパワーポイントを見つけたときは、飛躍できるチャンスが到来したといっても過言ではないでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

個人事業主・中小企業教務効率コンサルタント。Notionアンバサダー。「一緒に未来を見る伴走者」として小さな会社や個人事業主の方をフォロー|職種を超えて参加できるバックオフィス構築|オールインワンアプリ「Notion」を使った経理ノウハウなどのオンラインセミナーを開催|ほぼ毎日更新ブログ「経理戦略会議」管理人。メルマガ50代からのひとり仕事を毎日配信。

目次