今でも持っている事務所時代のシャチハタ。黒一色が嫌でカスタマイズ。
伝票にシャチハタを押していた時代。
あの朱色は、目から見ても重要な意味を持っていました。
自分のところに来た帳票に、然るべきところにあの朱色がないことで、アラートを発して未然に事故を防いていました。
特に、大きな法人では「決裁権限表」などで、内部統制を実施しています。
しかし、昨今、行政の肝いりである「押印原則等の見直し」で、ハンコが全廃する時代になってきました。
ハンコが担ってきた内部統制は、はたして維持されるのでしょうか。
書類にハンコが漏れるとき
次のような場合、ハンコが漏れていることが多いです。
① 正規のルートで作業をしていない
決裁者が不在のとき、よく発生します。机の引き出しにあるシャチハタを持ち出して、代理で押印するケースも該当します。
② 悪意がある(横領など)
金庫にある現金が紛失しているときに、ピンポイントで現金出納帳に照合決裁が押印されていなかったことが多いです。
③ イレギュラーな事象が起きて、慌てて処理をしている
その現場に決裁者がいればいいのですが、いないときに限って、イレギュラーなことが発生します。
④ 担当者がうっかり忘れている
忙しかったり、お金の扱いが不得手の担当者に多いです。
こうしてみると、インシデントやアクシデントなどの事案が発生するときに、押印漏れが多くなっていることがわかります。
ただ忘れてただけかもしれませんが、決裁ルートがうまく回っていないことで、事故のリスクが大きくはらんでいるわけです。
ハンコは内部統制として機能する
たかがハンコ、されどハンコ。
押印していないだけなのに、なぜ経理はそれだけで差し戻しするのでしょうか。
先の4点のような重要な事故が潜んでいる可能性が大いにあるため、管理部門として厳密に対応せざるえないのです。
また、会社のルールが守られていないことが一目瞭然で、きちんと決裁者がその部署を統制していない、機能していないことにも通じます。
また、担当者の意識が甘く、きちんと適正に業務を行えていない状態です。
そして、組織のお金は他人のお金であり、それ相応の誠実性が求められます。
私の経験ですと、押印漏れの多い人は、内外からの信用も薄く、ゆくゆくは大きなアクシデントを発生することがたびたびありました。
このことから、今までの「押印原則」は、組織の内部統制や外部との信頼性を担保する大切なことだったのです。
ハンコの代わりになるもの
これからの時代は、「脱ハンコ」です。
ん? 今まで大切とされた内部統制を担保する「ハンコ」がなくなったら、どうやって組織を管理監督すればいいのでしょうか。
答えは「ペーパーレス化」です。
紙がある以上、その紙はどこから発生して、誰のところにきて、どう組織の資金を動かすのか、きちんと証拠を残す必要がありました。
しかし、その紙がなければ、ハンコを押す必要がないのです。そして、これからは、紙はただのデータ化したものの偶像にすぎない存在になっていくのです。
データなら、データで経緯の証拠を添付することができます。
となると、ハッカーなどの悪意で改ざんする事件も今後発生する可能性が高いと心配する方も多いと思います。
しかし、今までのハンコも、誰かが勝手に押印することもあったので、そこまで「ペーパーレス化」に嫌悪を示さなくてもいいと考えます。
それより、ハンコの時代でも、ペーパーレス化の時代でも、きちんと内部統制がとれているか、カンを鈍らせないことには変わりありません。
ハンコがなくなっても、ハンコの精神は生き続けるということではないでしょうか。