AIを立ち上げて、音声入力すれば簡単に絵や文章が生まれている。
これは、これから紙とペン、そしてキーボードでさえ必要なくなる時代が到来するわけで、誰もが普通に知識を得て、考える行為が薄れることを示唆しています。
そんな中、手書きで文字を綴るという古式思考術を改めて考えてみました。

iPadとApple Pencilじゃない。お帳面とペン。
こうして人は考えることをしなくなる
「それでは、お帳面を机に出して、漢字を10回ずつ書きなさい」
これは、私が小学1年生のときの担任の先生が、国語の授業で言っていた言葉でした。
なぜ、この年になっても覚えているのかというと、
この「お帳面」という単語が脳裏から離れなかったのです。
「普通、ノートと言うのに。先生って年寄りだから……」
そう母に言った私は、次の瞬間、自分の言った言葉に後悔するのです。
「和子。担任の先生は、今どきと違って古き良き時代を生きた人なの。学ぶことはたくさんあるはずよ」
幼少期から、私の実家では江戸時代から続く家の話を絶えず聞かされて育ちました。
戦争の時期でもう、国が限界を迎えたと思われたとき、金持ちもそうではない人も、みな同じように大きな苦労を背負った話も聞きました。
そういう意味では、私の中には、生きた血として先祖から受け継がれた感情のようなものを持っているのかもしれません。
だからこそ、このAI時代には、ただ便利なものとしてもてはやすだけではなく、なにか失うものもあるはずと、肌で感じているのです。
AIが誰もが使えるようになったことで、こうした過去からの知見や頭脳で考えられた結果を、自由に取り扱えるようになりました。
わからなければ、AIに教えて貰えばいいし、悩みがあればAIに聞いてもらって慰めてもらうことも簡単にできます。
でも、そうやってAIで結果を出したあと、私たちは何をしているのでしょうか。
ただ、右から左へアウトプットしているだけではないでしょうか。
なにか結論として決定するとき、自分で考えて悩まず、パソコンの画面に現れた文字と絵という記号の集まりをただ、横流しにしている自分がいます。
もしかしたら、お帳面に筆圧を強くして文字を書くという行為がなくなることに、無意識にアラートを出しているのではないかと、思うようになったのです。
「火」「機械」「計算機」「AI」……
人は、どのように進化してきたのか。
これは、歴史をたどればわかります。
人はコンスタントに進化してきたわけではなく、一つのトリガーをきっかけに、飛躍的に変わっていくことを繰り返してきました。
まずは、「火」。
動物たちが避けていたものを、人が扱えるようになったことで、食文化に華が開き、効率よく栄養素を摂取できるようになりました。
これで、各地で旬の食材を調理する文化に発展していき、知的好奇心を大いに刺激を受けるようになりました。
これが、人が動物から人に変わったトリガーになります。
そして、しばらくして「機械」。
これは、蒸気機関車など、労働の効率化を大きく飛躍させました。
人の往来も効率よく、大量に動くようになり、時代の変化も早くなってきました。
これによって、経済力の格差も生まれ、資本主義が生まれました。
次に「計算機」です。
これは、知的作業の効率化を図りました。
統計学など、数字を取り扱う業務に、この計算機は大きな効率化を果たしていきます。
計算機だったコンピューターは、いろんなものに派生していきます。
小型化、計算機(電卓)、アプリケーションを搭載できるOSの開発によって、パーソナルコンピューターになり、ネット環境を縦横無尽に情報が駆け巡るようになりました。
これは、経理の世界でも同じです。
手書きの帳簿、転記を繰り返し試算表をつくる過程を、ソフトが代用するようになり、今では紙の伝票が文具店からなくなっています。
そして、今は、AIです。
これは、人類が火を扱うレベルのインパクトがあります。
そして、かつて経験したことのない未知の世界が待っています。
火は、人類がコントロールできましたが、AIはコントロールせずとも、AI自身が身の振り方を決められます。
こんなとき、人はどうあるべきなのか、あらかじめAIに振り回されず、自分のペースで思考できる武器を手放すのは得策ではないと思うのです。
命は肉体に宿るという大原則を忘れない
こうした進化によって、人は過去をどんどん地層の奥深くにしまい込んでいきます。
普段は意識していないけど、こうして人は、自分のアイデンティティとして先祖伝来の叡智を携えて生きています。
これらの知識は、昔話に語られていたり、民族の持つ価値観に現れていたりしています。
そして、AI時代がきたことで、つい2年前のことが、私たちの日常からなくなっていくのです。
ここで、冷静に考えなくてはなりません。
人は、大きな変化があったあと、想像を絶する長い年月を重ねて順応してきました。
でも、今は、一瞬にしてどんどん変わっていきます。
本来、人は大きく変わるには、目の前に起こっていること、今までの当たり前だったことのすり合わせをする必要があったのです。
でも、これからは、そんな時間を持たせてくれません。
ここで予想されるのが、アレルギーや拒絶反応だったり、アイデンティティ崩壊につながることです。
そんなとき、深呼吸して肉体を使って文字を書くことで、思考することができたら、自分はこの肉体で生きているという実感を得るようになるはずです。
私は、万年筆でモーニングノートを書くことを続けています。
ペン軸のなかになるインクが、ペン先と紙の摩擦によって、流れ出て文字になっていきます。
この様が、まるで自分の血潮を出しながら、自分が考えていることを、この目と身体の感覚で確かめることができます。
そして、インクが枯渇したら、インク瓶からインクを吸引します。
まるで、飢えた知識欲を満たすような感じです。
別に、万年筆でなくてもいいわけで、大事なのは、自分の身体を使って脳を奮い立たせることを続けることで、要らぬ悩みを手放して、自分らしさを保ち続けることなのです。
AI時代は、自分らしさを手放しやすくなるでしょう。
どんどん、社会の当たり前=自分になっていき、考えることも代用されていきます。
ここで起こることは、「自己喪失」という、メンタル不調が増えるのではと危惧しているのです。
文字でなくても、自分の声で歌う、自分の絵筆で絵を描く、とにかく、人にしか与えられていない「言葉」、ものを作り出す「手」を、機能させ続けた人こそ、AI時代でのファーストペンギンになりうるのかもしれません。
「お帳面に、しっかりと漢字を書きましょう」
あのとき、先生の言葉に、古いと馬鹿にしていた小学生だった私に言いたいことがあります。
意外と古いものが、人の心を救うかもよ。
そう、かつての自分に言いながら、今朝もせっせとノートに文字を綴る時間を作ってまいります。
=編集後記=
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