別に、簿記を知らなくても、商売はできます。
確定申告だってできちゃいます。
今どきのクラウド会計ソフトを使えば、記帳もホイホイ処理できます。
でも、簿記を知っている人と、知らない人の差には、見えない隔たりがあるようです。
それは、「商売の目」です。
簿記ってなに?
実は、簿記を使いこなしている専門家は、顧問先やお客様に
「簿記を勉強してください」
ということはありません。
なぜって、簿記を知らない人に、簿記を知っている専門家として解説・説明をして、相談受けるのが仕事だからです。
簿記を知らないお客様に、記帳指導するときは、お帳面の付け方を伝授します。
それを元に、会計事務所で記帳代行し、財務諸表を作成し、それを元にお客様にフィードバックするのが今までのルーティン業務でした。
でも、本当は、商売やっている人こそ、簿記は必須アイテムです。
これは、自分自身が事業者になって、強く思っていることです。
もし、簿記を知らずに独立していたら……。
今見えているものを、何も知らずにビジネスをしていたかと思うと、背筋が凍ります。
つまり、簿記は、商売するときの見えるべき景色を見るための双眼鏡なのです。
大海原に航海にでるとき、羅針盤と望遠鏡を持って乗船します。
この羅針盤と望遠鏡にあたるものが、簿記なのです。
しかし、この例えで説明しても、ピンと来ないかもしれません。
では、こちらはどうでしょう。
「簿記は、取引先を始め、ステークホルダーの現状を知るマップを作るためのツールである」
記帳は、自分の商売のために付けますが、出来上がったものは、実は、自分(損益計算書)と周囲の現状(貸借対照表)を数値化したものなのです。
この数字を、単なる自分の現状を知るだけなら、簿記の考え方を知らなくても理解できます。
しかし、同じ数字を見ても、自分の周囲の現状を知るようになるには、簿記的思考がないと、なかなか理解できません。
資格を持つ専門家の方々は、「簿記を勉強しなさい」という人は少ないです。
でも、現実、簿記の勉強を通じて、簿記的思考を身につけるべく、簿記3級を勉強しておくと、ずいぶんとビジネスしやすくなるようです。
経営分析に必要な視点「商売相手を分析する」
簿記は、正式に複式簿記と言います。
この複式の仕組みを知っていると、経営分析もより深く理解することができます。
経営分析とは、今の商売に問題が起こっていないかチェックするための指針です。
やり方は、
- 財務諸表を使う。
- 前期比較、同業他社比較
- 指標を計算して、安全かどうかチェックする。
この3つを、定期的に行います。
そして、
- 収益性
- 安全性
- 生産性
- 成長性
の視点から、自分のビジネスをチェックしていきます。
血液検査で言えば、肝機能、貧血、コレステロール、尿酸値といった項目で、自分の健康をチェックするようなものです。
ただし、ひとりビジネスや、小さな会社の場合、全部が全部、これらの数値をチェックする必要はないでしょう。
特に、ひとりビジネスの殆どが、在庫を持たない仕事なので、
始めのうちは、
- 収益性
- 安全性
の2つをチェックして、推移を見守ってみることをおすすめしています。
収益性はビジネスの利益を生み出す力を示す指標です。主な指標には以下のようなものがあります。
- 売上高総利益率 = (売上高総利益 ÷ 売上高) × 100
- 売上高営業利益率 = (売上高営業利益 ÷ 売上高) × 100
- 売上高経常利益率 = (経常利益 ÷ 売上高) × 100
安全性は企業の財務的な安定性や返済能力を測る指標です。主な指標には、
- 流動比率 = (流動資産 ÷ 流動負債) × 100
- 自己資本比率 = (自己資本 ÷ 総資本) × 100
- 当座比率 = (当座資本 ÷ 流動負債) × 100
そして、事業に軌道が乗るようになれば、
成長性をチェックしていきます。
主な指標は、
- 売上高増加率 = ((当期売上高 – 前期売上高) ÷ 前期売上高) × 100
- 総資産増加率 = (総資産増加額 ÷ 基準時点の総資産残高) × 100
で、これからどのように伸びていくか、推し量ることができます。
そして、人を雇って企業体になってきたら、
生産性をチェックします。
生産性は企業がヒト・モノ・カネをどれだけ効果的に活用しているかを示す指標です。主な指標には、
- 労働生産性 = (付加価値額 ÷ 従業員数) × 100
- 資本生産性 = (付加価値額 ÷ 総資本) × 100
- 労働分配率 = (人件費 ÷ 付加価値額) × 100
これらの指標が高いほど、企業が資源を効率的に活用していることを示します。
簿記的思考を身につけるには
この経営分析は、毎月、四半期ごと、半期、年次決算といった区切りのときに、必ずチェックして比較していきます。
最初は、同業他社と比べても、意味はあまりありません。
スタート時の環境や状況は、千差万別だからです。
前回より良い数値を出せるよう、絶対評価でチェックすることが、自分の成長につながります。
しかし、これはあくまでも、自分の状況しかチェックしていません。
ここに、簿記的思考がないのです。
簿記的思考とは、自分を取り巻く環境も含めて、自分の状況を知る考え方のことをいいます。
これぞ、複式簿記の考え方です。
例えば、一つサービスが売れたとします。
売掛金(掛けであとから入金されるもの)が増えて、売上の数値がアップします。
この売掛金とは、サービスを買った相手にとって、買掛金になるのです。
つまり、売掛金が増えた=相手の資産が減少、なのです。
また、銀行から借入したとき、こちらは借金が増えて、預金が増えるのですが、銀行にとっては、貸付金が増えて、利子収入が発生するということなのです。
自分のビジネスによって、相手の資産が変わるという視点は、簿記を知らないとなかなかわかりにくいです。
突き詰めれば、このものの見方は、社会に対して自分のサービスが、どのくらいの価値があるのか、逐一分別してチェックすることができるのです。
自分の仕事、作業と思っていたことを、ビジネスとして広げていくなら、
この簿記的思考は、持っておきたいものです。
大抵、商売を続けていくと、この辺りのカンみたいなものが養われていきます。
でも、複式簿記を勉強して、商売の全体像を掴めておけば、圧倒的な短時間で、その感覚を身につけることができるのです。
そういう意味で、ビジネスを始めたいなら、まずは簿記を勉強しておくといいですよ。
今なら、無料で学習できるサービスもあります。
それでも、簿記の勉強は大変……という方には、まずは売上と経費をカウントするタイミングを理解するところから始めるといいでしょう。
それがわかれば、決算の仕組みもわかるようになるでしょう。
=編集後記=
【昨日のできごと】
週末から月曜日にかけて、オフ。
そろそろ始まる年末大掃除に向けてのタスクチェックなど。
かずこのお気に入り
日常の中で見つけたお気に入りを、NotionページにUPしています。
今、 町中華のかた焼きそばにハマっています。
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ひとり仕事の格言、ブログ・You Tube更新を配信。
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