経理をやっていると、目の前の帳票に追い立てられてしまいます。
自分が機械のようになって、細かいレシートをスキャナすることに没頭します。
1日を終えると、目の疲れや肩腰に鈍い痛みを抱えていることに気づき、自分に人間らしさが残っているか、再確認したりします。
私の会計人生は、公益法人の経理から始まりました。
その後、会計事務所に入って13年。
相変わらず、目や肩腰を労る日々が続いていましたが、今では、誰のための仕事なのか、肌で感じるようになってきました。
経理は誰のものなのか(一般企業の場合)
組織とは、人の集まりです。そして、関わり方もさまざまです。俗に言う、ステークホルダーというものです。
社長が起こした会社は、たくさんの従業員が入るようになり、取引先も増えます。
銀行や、株主も経営に口出すこともあるでしょう。税務署も、組織がいくら利益出したのか、興味を持って来ることもあります。
また、自分たちの仕事がうまくいっているのか。とても気にするところです。
このように、我々も含め、たくさんの人たちが会社のことを知りたがっています。
それを測って公表できるようにしているのが、企業会計基準をはじめとした仕組みなのです。
そして、情報を積み上げる仕事が経理なのです。
帳票を作ることが目的ではありません。確かに、税法などから求められる要件に満たすために作業することが多くなります。
しかし、本当のところは、求める人たちに情報(利益、負債額など)を出せるようにする仕事が、経理なのです。
公益法人の場合
公益法人では、経理とはどのような位置付けでしょう。
そもそも、公益法人とは、自分たちのための利益を出す企業と違って、社会に利益をもたらすための組織です。
はい、考え方が全く別次元なのです。
お金に対する価値観が全くもって異なります。
企業なら、汗水垂らして働いた対価で売上が入ってきます。
しかし、公益法人は、行っている事業に対して、寄付や補助金という、我々から見たら不労所得のようなお金が入ってきて、それによって運営するところが多いです。
我々は、この公益法人の事業のおかげで恩恵を受けるだけなのです。行政のサービスという位置付けにとても近いと思っていただければ良いでしょう。なので、その事業に対しては、所得が出ても税金がかかっていないのです。
では、一体誰が、公益法人に対して利害が生じているのでしょうか。
それは、資金を出している補助金や助成金の支払い者や寄付者、そして会費を払っている会員です。そして、公益性にお墨付きをつける内閣府をはじめとしたお役所です。
自分たちが出したお金がどのように消化されたのか。きちんとお願いした事業を進めてくれていたのか。一部の人だけに使われていないか(横領など)。事細かに、制約がかけられています。
そして、公益法人会計基準では、もらったお金がどのように使われたかを報告する仕組みになっています。
まとめ
一言でまとめると、
企業会計では、利益に対してその理由がわかるようになっています。
公益法人会計では、お金を出した人に説明するようになっています。
このように、同じ経理でも、仕事の仕方がまるで変わってくるのです。
今、目の前にある領収書は、一体誰のために処理するのか。
異なる会計基準で、経理を経験したからこそ、考えるようになってよかったと思っています。